AmericaD


 何も無い荒れ果てた大地。そこを人々は荒野と呼ぶ。
 そこはかつての戦争によって、大地が死んだ区域。
 この世界にはこの広大な荒野が様々な場所に広がっている。
 死した大地はやわではなく、少しずつと再生を始めている。
 死したる大地に少しずつだが、生命が産まれてきている。
 荒野は生命が豊富とはいえないが、すくない生命が懸命に生きている。
 その荒野を二つの影が横切る。小さな二つの影が。
 彼らは歩く。探しているものを見つけるために。
 "America"を見つけるために、彼らは前に進む
 一人の少女と一匹の黒猫の旅はまだ続く………

 考え事をしているのか、いつもと違ってカムパネルラは黙って歩いている。
 横目で彼女を見上げながら、僕はそんなことを考えていた。失礼ながら「珍しいなぁ」とも思ったよ。
「…………」
 今回は読まれなかったみたいだ。
 黙々と僕等は荒野を歩き続ける。
 どの位歩いてからだろう。太陽がだいぶ高くなってきた時だ。カムパネルラが口を開いたのは。
「ねぇ」
「ん?」
「あのオジサンの言っていた意味どういうことだろうね?」
 彼女の質問について僕はずっと考えていた。
 カムパネルラもずっと考えていたみたいだ。
「んー。分かんない」
 僕は素直に答えた。分からない物は分からないからね
「とりあえず、現段階で分かるAmericaとは」
「1:理想郷」
「2:オジサン曰く相棒(馬)と旅することがAmerica」
「「3:私・僕達ならすぐに見つけられる(らしい)」」
 とりあえず、はもる。うん。息ピッタリな僕ら
「………分からないね」
「うん……」
 考えながら、歩き続ける。
 考えながらも、僕らは別の、他愛ない事を話した。
 前の町のパン屋のパンは美味しかったとか、時期的にそろそろ雨が降りそうだとか、お金そろそろ稼がないと、とか。
 そんな他愛のない話をした。
 お昼近く、少し小高い丘にたどり着くと、風がある香りを運んできた。
「ん? 何だろう、この香り?」
「ほえ? ………そういえば、何だろうね?」
 嗅いだ事のない不思議な香り。
 胸のうちがワクワクしてきた。
「あ」
 と、カムパネルラが声を上げて、立ち止まり鞄を漁り始めた。
 そして、地図を引っ張り出した。
「やっぱりそうなんだぁ〜」
「? 何、どうしたの?」
 そう言うと、カムパネルラがしゃがんで、僕に地図を見せてくれた。
 ………分からないよ。何が何だか
 言葉を話せても、文字は読めないから、何が何だかさっぱり。そんな僕にカムパネルラは解説してくれた。
「あのね。ココが昨日までいた街」
 と、ある一点を指す。
「で、ココらへんが今いるとこ」
 次の一点を指す。
「ふむふむ」
「それで、ココが次の目的地の町ね」
 そこから、近くの町を指す。
 位置的にこの丘を越えたところにあるみたいだ。
 あ。
 その街の近くにあるモノがあった。
「で、この街を見ると……」

 キューーイ キューーイ キューーイ

「カモメ! 海があるんだねっ!」
そう。嗅いだ事のない香りは海の香り、つまり潮の香りだ。
「………………」
 カモメにお株を奪われた感じになったので、笑顔のまま固まった。
 そして、いぢけ始めた。
「…………」
「ほ、ほら。カムパネルラ。僕ら海見たことないから、ね?」
 何が言いたいんだろう、僕。
 初めて海が見れるって事で、興奮して頭が正常に動かない。
「ん〜。それもそだね。そんじゃ行こっか?」
 相変わらず単純だなぁ。楽で助かるけど。
「何か言った?」
「? 別に?」
 軽く流す。
 ちょっと納得してなさげだけど、次の言葉を紡いだ
「でも、海に面している町だから」
「港はあるよね」
「つまり大きい町」
 そこから導き出される事………
 その事を考えただけで、僕らは身体がふるえ、早歩きになって丘を登る。
 そう。
 大きい街ならば、Americaの情報が多いはず。有力なモノもきっとある
 でも……
 でも、港町が小さかったら、どうしよう
 小さい街だと……それ相応なモノしか入らない。
 ちょっとドキドキしながら、先を歩くカムパネルラを追いかけた。
 丘の上にたどり着くと、街を一望できた。
 そして、僕らの期待を裏切らなかった。
 街は丘の下ったトコロにあり、城壁で囲まれている。
 街の中心に大きな時計台が見えて、そこの周りに広場が少し広がっている。その広間を囲むように家が建って、たくさんの路地が走っている。
 ここから見ると、街を大まかにだけど、内部構造が大体分かる。
 街のはずれには、水を綺麗にする施設みたいなのがある。
 結構発展している町みたいだ。港も大きいし。
「行こう、カムパネルラっ!」
「うん!」
 僕は手早くカムパネルラに飛び移る。
 それを確認すると、カムパネルラは一気に駆け下りた
「ああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
 ……とかっこよくまとめたかったけど、そうは行かないモノで。
 走ってちょっとしてから、風圧で帽子が吹き飛ばされた。
 カムパネルラは僕をほっぽり捨てて、飛ばされていく帽子を追いかけた
「待ってーーーーーーーーーーーーーーー…………」
 ………先が思いやられるなぁ。

 帽子と仲良く追いかけっこして、無事戻ってきたカムパネルラ。
 ただ疲れたらしく、走る気力が無いみたい。
「や、やっぱ、歩い、て、行こう、よ…というか、歩かせ、て…」
 こんな感じだから。
 そんな訳で、僕らはのんびり歩き出した。
 徐々に、街が近づいてくる。
 …というか、壁が迫ってくるの方が正しいかも
 ちょっとキンチョウしてきた
 カムパネルラもなのか、顔が強張っている。
 ずっと会話がない。
 ………それはそれで不気味だ、と思う。
 とか、考えているうちに、門が目の前にあった。
 僕らは門の前で一度立ち止まった。
「……行くよ」
「うん…」
 バケモノの巣窟に入るわけでもないのに、必要以上に緊張する僕ら。
 そして、門をくぐって、僕らは再び固まったのだった………



To be continued...
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